海を見る。
魚を知る。
たくさん生きている。

千の魚が獲れる、
相模灘から生まれた
「熱海千魚ベース」

熱海の海はとっても豊か。
1500種類以上の魚が獲れる

 熱海の海は相模灘(さがみなだ)と言われ、日本で獲れる魚の約3〜4割(1500種類)が獲れる豊かな海です。年間を通じてたくさんの魚が水揚げされます。
 ですが、全ての魚がお店に並ぶわけではなく、実は私たちが見たことのある、食べたことのある魚の種類はごく一部。中には市場価値がつかない、値段が低い「未活用魚」と言われる魚もいますが、その存在はあまり知られていません。

どうして「未活用魚」が
生まれるの?

 どうして市場に出回らない魚や「未活用魚」が出てしまうのでしょうか? その大きな理由のひとつとして、私たちは“人気のある魚”と“人気のない魚”があるからだと考えています。人気が極端に偏るからこそ、必要とされない魚が出てきてしまいます。実際に、世界のほとんどの地域で、魚の損失や廃棄は30〜35%という報告もあります。
 サーモンやマグロのような“人気のある魚”に集中するのではなく、多様な魚をいただくことが、未活用魚を減らし魚の食品ロス解消や、人気のある魚の乱獲防止や海の生き物を守ることにもつながります。

「熱海千魚ベース」が
目指すこと

 そこで私たち「熱海千魚ベース」プロジェクトは、1000種類以上の魚が獲れる熱海を起点に、熱海で獲れた未活用魚をはじめいろんな魚を知ること、学ぶこと、食べることなどを通じて、海への興味関心や理解を深める「拠点(ベース)」を作っていきます。また、ここを「土台(ベース)」に、いろんな取り組みや解決策、食の楽しみ方が生まれて欲しいと思っています。

ATAMI’S SEA

熱海の海について

未活用魚を活用しているのには、
わけがあるんです。

 熱海の主要漁法「定置網漁」は、魚を獲り尽くさない漁法として知られています。ですが、そんな海に優しい漁といえども、値段がつかずお店に並ばない「未活用魚」が一定数獲れてしまいます。

 例えば、私たちがよく食べている「アジ」も流通に乗るのはマアジがほとんどで、アオアジやメアジといったその他のアジは、価格がつきづらく買い手がありません。「サバ」は春夏はやせて脂が乗っておらず、価値が低くなってしまいます。また、鮮度が良くても獲れた量が少なすぎて、流通コストが上回り出荷できないということもあります。

 一方、温暖化をはじめとした環境変化や乱獲などを背景に、年々日本の漁獲量は減ってきています。限りある資源を無駄なく活かし、これからの社会や海の環境維持につなげていく段階に来ています。

 実際に、熱海市の港町・網代漁港で活動する網代漁業株式会社では、「限りある資源を大切に、獲れた魚を最大限有効に利用することが、一次生産者の責任である」という理念のもと、2013年頃から意図せず獲れてしまった未活用魚を大きくなるまで育て、おいしさや価値を最大限高めてから出荷する「蓄養」に取り組んでいます。

 春夏はサバ、夏〜秋はワカシと、時期によって育てる魚も変わります。初夏に出荷されるサバは「伊豆海(いずみ)サバ」として知られ、そのおいしさから地域内外で人気を集めています。

約1500種類の魚が獲れる、熱海の海ってどんな海?

熱海の海は、熱海の沖合いに位置する「初島」のすぐ沖で水深1000mとなり、相模トラフの深海へとつながっています。深い海、複雑な海底地形、多様な温度・水質の海流。さらには、周囲の山々から川を伝ってたくさんの栄養が運ばれてくるなどの環境条件から、魚の餌となる小さなプランクトンや海藻が豊富で、魚をはじめ生物が多数生息する、日本屈指の生物多様性を持つ豊かな海が生まれました。

日本で獲れる魚の約3〜4割(約1500種類)もの多種多様な魚がいるというのは、それら魚を支える生物も多数存在する、栄養いっぱいの海ということなんです。