未活用魚を活用しているのには、
わけがあるんです。

熱海の主要漁法「定置網漁」は、魚を獲り尽くさない漁法として知られています。ですが、そんな海に優しい漁といえども、値段がつかずお店に並ばない「未活用魚」が一定数獲れてしまいます。
例えば、私たちがよく食べている「アジ」も流通に乗るのはマアジがほとんどで、アオアジやメアジといったその他のアジは、価格がつきづらく買い手がありません。「サバ」は春夏はやせて脂が乗っておらず、価値が低くなってしまいます。また、鮮度が良くても獲れた量が少なすぎて、流通コストが上回り出荷できないということもあります。
一方、温暖化をはじめとした環境変化や乱獲などを背景に、年々日本の漁獲量は減ってきています。限りある資源を無駄なく活かし、これからの社会や海の環境維持につなげていく段階に来ています。
実際に、熱海市の港町・網代漁港で活動する網代漁業株式会社では、「限りある資源を大切に、獲れた魚を最大限有効に利用することが、一次生産者の責任である」という理念のもと、2013年頃から意図せず獲れてしまった未活用魚を大きくなるまで育て、おいしさや価値を最大限高めてから出荷する「蓄養」に取り組んでいます。
春夏はサバ、夏〜秋はワカシと、時期によって育てる魚も変わります。初夏に出荷されるサバは「伊豆海(いずみ)サバ」として知られ、そのおいしさから地域内外で人気を集めています。

約1500種類の魚が獲れる、熱海の海ってどんな海?
熱海の海は、熱海の沖合いに位置する「初島」のすぐ沖で水深1000mとなり、相模トラフの深海へとつながっています。深い海、複雑な海底地形、多様な温度・水質の海流。さらには、周囲の山々から川を伝ってたくさんの栄養が運ばれてくるなどの環境条件から、魚の餌となる小さなプランクトンや海藻が豊富で、魚をはじめ生物が多数生息する、日本屈指の生物多様性を持つ豊かな海が生まれました。
日本で獲れる魚の約3〜4割(約1500種類)もの多種多様な魚がいるというのは、それら魚を支える生物も多数存在する、栄養いっぱいの海ということなんです。